殺し屋の出世術/野宮有【感想・レビュー】ネタバレなし
野宮有 著 / 講談社
もし殺し屋の会社が恐怖ではなく成長や、やりがいで人を動かす職場だったら。そんな会社なら、ちょっと働いてみたいかもしれない。違法なのが致命的なんですけども、それはそれ。とはいえ、そんな状況、疑似体験してみたくなりませんか!?今日ご紹介するのは、野宮有先生の『殺し屋の出世術』です。
大ヒット作『殺し屋の営業術』の続編にあたる一冊です。前作を読んでからの方がより主人公の鳥井の変化が楽しめると思います。
鳥井が殺し屋の世界に足を踏み入れる第一作です。先に読んでおくと、この『殺し屋の出世術』での鳥井の変化をより楽しめると思いますよ!
ちなみに今作の『殺し屋の出世術』は発売前から大きな重版がかかるほど注目を集めています。ネタバレなしでご紹介していきますので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです!
📖 殺し屋の出世術の基本情報とあらすじ
【あらすじ】
前作『殺し屋の営業術』で殺し屋の世界に足を踏み入れた鳥井。その続きにあたる『殺し屋の出世術』では、鳥井が殺し屋の会社での出世レースに巻き込まれていきます。敗ければ死。あまりにも過酷な状況で鳥井がどう戦っていくのか?そして前作のあと鳥井は何をしてきたのか?
💼 殺し屋なのに、働きたくなる会社
この本を読んでいて僕がいちばん心を惹かれたのは、鳥井の目指す職場のあり方でした。
鳥井は、部下を恐怖で抑えつけません。部下に営業方法を教え成長を促す。そして楽しく働ける場を作ろうとします。詐欺がメインの講習なのにです。これが一般社会の営業方法を教えてくれる鳥井の講習であれば聞いてみたいなぁ、と思ってしまいました。自分の成長を感じられて仲間と楽しく働ける場所。それは、殺し屋稼業という設定を抜きにすれば、多くの人が憧れる理想の職場ではないでしょうか。
もちろん、どう考えても勤めてはいけない会社なんですけどね。こんな職場で働いていたら僕の人生は波乱万丈もいいところです。命がいくつあってもたりやしない、と早々に逃げ出していたことでしょう。ですが他愛ない僕の妄想とは違って、鳥井の目指す職場の魅力は本物です。
🧠 魔法のない、現実の枠の中での戦い
この作品の凄いところは、これだけ絶体絶命の状況が続くのに、ファンタジーのような魔法は一切出てこないことです。鳥井は、あくまで現実という枠のなか、頭脳と機転だけで戦います。
敵は事前の周到な準備で鳥井の手の内をすべて把握しています。普通なら詰んでいる。それでも鳥井は現実的に考え得る手段だけで、この危機に立ち向かっていく。この魔法に頼らず、地に足のついた頭脳戦がとても熱いんです。どうやってこの状況をひっくり返してくれるのか。ページをめくる手が止まりませんでした。
📢 惹きつける物語には気をつけたい
この作品を読んで考えさせられたことがあります。物語には、人の心を惹きつける強い力があります。魅力的な理想やカリスマ的な語りは、多くの人の心を揺さぶり行動を促してしまうことがあります。
これは物語正統性という概念で、良い方向にも悪い方向にも使える力なんです。殺し屋と詐欺という前提があるのに、鳥井の目指す会社が魅力的で惹きつける力の強さを感じませんか?
この作品はこの物語正統性に抗うために、自分で選び、自分で決める、ということが大切だと説きます。これが悪い方向に流されるのを止める武器なんです。
誰かが語る魅力的な物語にただ流されるのではなく、自分の頭で考えて自分で選ぶこと。この姿勢こそが強い力を持った物語に抗い、立ち向かう取っ掛かりにもなるということでしょう。
ただし、作中ではこんな説教臭く書いてません。そこはご安心ください、と反省しつつ。でもここは読みながら、なるほど、と僕は深くうなずいた部分でした。
📚 余談ですが、参考文献が気になります
最後に余談を。この本の巻末に書いてある参考文献が、やたらと気になりました。前作の『殺し屋の営業術』にも参考文献を載せておいてほしかった勢いです。
殺し屋の小説なのに参考文献?と、思わず二度見してしまいました。でも読み終えてみると、腑に落ちます。鳥井の営業術も組織論も妙に説得力があるんです。それはこの作品がしっかりした土台の上に、書かれているからなのでしょう。
殺し屋の営業マンが主人公、という荒唐無稽な設定なのに中身は地に足がついている。その理由の一端がこの参考文献にあるのかもしれません。何を参考にしたのか気になって仕方がない一冊でした。
🙋 殺し屋の出世術はこんな人におすすめ
📝 殺し屋の出世術の感想まとめ
というわけで今日は野宮有先生の『殺し屋の出世術』をご紹介させていただきました。
殺し屋の会社なのに働いてみたくなる。そんな不思議な魅力を持った一冊でした。魔法のない現実という枠の中での頭脳戦。そして惹きつける物語に飲み込まれないため、自分で選び、自分で決めるという武器。楽しく読めて、少し考えさせられる。そして前作同様ワクワクさせてくれた一冊でした。
気になった方はぜひチェックしてみてくださいね!
ではでは積読を消化した頃に、またゆるりとお会いできたら幸いです!

