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📅·🎬 映画・原作比較

真夏の方程式 原作vs映画比較/東野圭吾【感想・レビュー】※ネタバレあり

東野圭吾 著 / 文藝春秋・映画化作品

※この記事は原作小説と映画の結末に触れる、ネタバレありの記事です。まだの方は原作からどうぞ。

同じ物語なのに映画は原作より短くてシンプル。それでいて切実な動機に変更されていました。今日ご紹介するのは、東野圭吾先生の原作を映像化した『真夏の方程式』です。

原作を読んでから映画を観た僕が、二つを並べてどこがどう違うのかをじっくり考えてみました。結末に触れますのでまだの方は原作からどうぞ。

🎬 映画『真夏の方程式』の基本情報

真夏の方程式はガリレオシリーズの長編で、映画版は2013年に公開されました。上映時間は2時間9分。玻璃ヶ浦という美しい海辺の町が舞台です。

恭平という少年が、天才物理学者の湯川と緑岩荘という旅館で過ごした夏の想い出がメインの物語です。原作小説と映画で事件の描き方に大きな違いがあります。

➖ 映画は引き算でできている

原作を読んでから映画を観て僕がいちばん強く感じたのは、映画は原作から色々なものを引き算している、ということでした。そして、その引き算がとても上手なんです。

一番大きいのが沢村の扱いです。原作では塚原刑事の遺体を崖の下に落としたのも、遺体を移動させようと言い出したのも沢村でした。

ですが映画では沢村の出番はほとんど削られ、遺体を移動させたのは川畑夫妻の行動に変更されています。その移動させている最中に節子が手を怪我して、その傷が遺体を動かした証拠だと湯川は推測する、という展開です。車も原作では2台あったものが1台に整理されています。

この変更で、殺人事件のトリックが原作よりずっとシンプルになりました。そして動機も分かりやすく、それでいて切実な事情に変わっているんです。

原作では杖をついた重治と非力な妻の節子では、遺体の移動は無理だろうとされていました。そこで登場したのが沢村だったんです。

ところが映画版では遺体が旅館で見つかれば、もう営業できなくなってしまう。これは川畑夫妻の切実さとして胸に迫ってきます。

引き算をしたことでぼんやりしていた絵が濃くなった、と僕は感じました。この設計の変更はうまいなぁと思いました。

塚原刑事殺害のきっかけになるシーンは、なんと映画の冒頭で早々に明かされているんです。

他にも自分の推理を最後まで絶対に口にしない湯川が、映画では55分過ぎた中盤くらいで重治が塚原刑事を殺した犯人だ、と明言します。

おそらく尺の都合なのでしょう。けれども映画は分かりやすさを選んだ結果かなぁ、と僕は感じました。

🎥 映像だからこそ、伝わるもの

引き算がある一方で、映画には映像でしか出せない強さもありました。

ペットボトルのロケット実験は、その筆頭です。原作を読んでいたときは、この場面の凄さが正直よく分かっていませんでした。

ですが映像で美しい玻璃ヶ浦の海の中まで見せられると、こんな経験をしたら自分もきっと忘れられない夏になっただろうな、と思わされました。

塚原刑事殺害のトリックも原作で理解はしていたつもりでした。ですが映像で確認できると、さらによく分かります。映像って凄い、と素直に思いました。

😢 原作を知っているからこそ、泣けたシーン

そして、これは自分でも意外だったのですが原作で真相を知った上で観たからこそ、映画で泣けた場面がいくつもありました。

一番は湯川が重治に、ホステスが殺された事件の真相を語る場面です。その様子をマジックミラー越しに聞いていた成実が、動揺して涙を流す。

湯川の推理を見当違いだと話す重治の目にも涙が光ります。前田吟さんの演技が本当に上手くて、泣けました。

冤罪を被った仙波の印象は、原作より映画版の方が良くなっていたと僕は思います。ホスピスにいる仙波が、湯川に事件のことを聞かれ、実の娘の写真を見せられて動揺するシーンがあります。

そのとき湯川は自分の推理を話しただけで、否定する仙波の意を汲んで、何度も問い詰めることなく、実の娘の成実が成長した今の写真を机の上に置いたまま帰るんです。

この行動には脱帽しました。湯川先生かっこよすぎ!

そして湯川はあっさり引き下がって帰ろうとします。それを見た岸谷は、それでいいんですか、と湯川に詰め寄ります。

岸谷の刑事としての葛藤も伝わってきます。原作を読んでいたときは、これほど良いシーンだったと分かっていませんでした。映像で観て、初めて良さが分かりました。

不思議なもので先に真相を知っていたからこそ、それぞれの人物が何を抱えているのかが分かって、細かな表情や間の意味が刺さってくるんですよね。知っているからこそ、登場人物の心情が分かってより深く泣ける。そんな観方ができました。

🛡️ 湯川が守ったもの

原作でも映画でも僕がたどり着いた読みは同じでした。『真夏の方程式』という作品は、湯川が家族を守ったお話だ、ということです。

たった一人で命に関わる秘密を抱えたまま生きていける人は、そんなに多くないでしょう。だから罰を受けると言っていた成実に、恭平を守れ。それが君の使命だ、と湯川は言います。

仙波が守り抜いた秘密を成実が自ら壊してしまわないように。こうして証拠を見つけ出すことなく、湯川は玻璃ヶ浦に住む家族を守った。

育ての親と生みの親が、愛する娘を守り抜いた物語だとも思いました。それは家族がみんな娘を愛していたからです。

『容疑者Xの献身』で湯川の行動にモヤモヤした人にこそ、この真夏の方程式をぜひ読んで、そして映画を観てほしいと思います。あの悩み苦しんだ経験から湯川が学んだように思えたからです。

📝 真夏の方程式 映画と小説比較のまとめ

というわけで今日は、映画『真夏の方程式』を、原作小説と比較しながらご紹介しました。

映画は原作から引き算をして、トリックをシンプルなものに分かりやすく変更しました。そしてミステリーとして肝心要な動機を、川畑夫妻にとって切実なものに変えてあります。

そして原作では気づけなかった映画の良さが、それぞれの登場人物が抱えている誰にも打ち明けられない秘密が、役者さんたちの演技と涙で伝わってきました。

映画を観て、原作も読んでみたくなった方へ。ネタバレなしの小説の感想は、こちらの記事にまとめています。

原作小説は、こちらから手に取れます。

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同じ物語でも小説と映画では、こんなに味わいが変わるものなんですね。

どちらから触れても、きっと面白いと思います。気になった方は、ぜひ両方の作品を味わってみてくださいね!

ではでは積読を消化した頃に、またゆるりとお会いできたら幸いです!