聖女の救済/東野圭吾【感想・レビュー】ネタバレなし
東野圭吾 著 / 文藝春秋・ガリレオシリーズ
今作では惚れた相手が殺人犯だ、と最初から分かっているんです。それでも刑事は、その人物に近づいていきます。読んでいて、危ない!と僕は叫びたくなりました。今日ご紹介するのは東野圭吾先生の『聖女の救済』です。犯人が誰かを最初から明かしたまま進む、倒叙形式のミステリーです。
ネタバレなしでご紹介していきますので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです!
📖 聖女の救済の基本情報・あらすじ
【あらすじ】
真柴綾音は子どもができないことを理由に、夫から離婚を切り出されます。その翌日、北海道の両親のもとに綾音は帰省していました。その間に夫は自宅で亡くなっているのを発見されます。
死因は毒物。ですが綾音には遠く離れた実家に帰っていた、という完璧なアリバイがありました。夫にどうやって毒が盛られたのかも分かりません。
捜査に当たる草薙は、容疑者であるはずの綾音に心を惹かれていきます。一方、後輩の内海は綾音の犯行を疑い、天才物理学者の湯川に協力を求めることになるのです。
そこで湯川がたどり着いたのは、これは完全犯罪だ、という驚きの結論でした。
この『聖女の救済』は、ガリレオシリーズ第5作にあたる長編で、2008年に刊行、2013年にはドラマ化もされました。
😱 倒叙だからこそ、怖い
この作品の一番の読みどころは倒叙という形式そのものにある、と僕は思いました。普通のミステリーなら犯人は誰かという謎を追いかけます。
ですが今作の『聖女の救済』は違います。読者は最初から綾音が手を下したことを知っている。知った上で草薙が彼女に惹かれていくのを見せられるんです。これがとにかく怖いんですよね。
読んでいてドリフの観客の叫びよろしく、草薙うしろー!と僕は叫びたくなりました。さすがに古いかと思いつつ。いや、比喩なんですけどね。
もし倒叙でなければ僕も草薙と同じように綾音を信じ、ラストで真実を知って呆然としていたかもしれません。そう思うとどんだけ恐ろしいお話なんだ、と思いました。
先に知らされているからこそ、草薙の危うさが手に取るように分かるんです。内海が綾音を疑う理由も、そんな内海に反論したくなる草薙の気持ちも、草薙が綾音を信じたくなる理由も分かってしまうんです。
この登場人物の気持ちが分かってしまう自分の心の動きこそ、この作品にある最大の仕掛けなのではないか、と思うんですよね。
💧 草薙という刑事の心の揺れ
僕がもう一つ惹かれたのは、草薙という人間の描かれ方でした。容疑者に心を惹かれてしまう刑事。解けそうで解けない殺害方法。草薙はこの事件の謎とどう向き合っていくのか。
追う者の葛藤がこの物語の隠し味になっているように思います。そしてその草薙を揶揄しながらも、そばで見ている湯川。
今まで事件を解決していくなか築き上げた二人の信頼が、事件の冷たさの中で静かに効いてくるんです。読み終えたあと、僕は嬉しさと物悲しさが混じったような、そんな不思議な気持ちになりました。
🧮『容疑者Xの献身』を読んだ人にも
この『聖女の救済』は、『容疑者Xの献身』を読んだ人に深く響く作品だ、とも僕は思いました。どちらも事件の謎の奥深くに人間としての姿が描かれています。
論理で割り切れないものに湯川が向き合う、という点で重なりあうところもあるんです。続けて読むと湯川という人物だけでなく、草薙の見え方も少し変わってくるように僕は思いました。
🌀 一筋縄ではいかない その先
そして聖女の救済は、ただの完全犯罪ものでは終わりません。綾音は完全犯罪を成し遂げるために何をしたのでしょうか。
物語が進むにつれて、動機を考えると説明のつかない登場人物の行動も浮かび上がってくるのです。人としての業なのか、何ともいえない得体のしれないものが背後にあると分かってきます。
タイトルにある聖女、そして救済という言葉が最後にどんな意味を帯びるのか。ここは、ぜひご自分の目で確かめてほしいところです。
🙋 聖女の救済はこんな人におすすめ
📝 聖女の救済の感想まとめ
というわけで今日は東野圭吾先生の『聖女の救済』をご紹介させていただきました。最初から犯人は分かっています。いや、分かっているからこそ怖いんです。
倒叙という形式がこれほど効いている作品を書ける東野圭吾先生はやっぱりすごい、と思いました。
草薙という刑事の心の揺れが気になって、僕は最後まで目を離せませんでした。ミステリーとしての驚きも、もちろんありますよー!
気になった方はぜひ手に取ってみてくださいね!
ではでは積読を消化した頃に、またゆるりとお会いできたら幸いです!

